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第25回  2012年6月号

〜将来への備えとしての人事管理区分の多様化〜

はじめに

近時の立法動向を見てみますと、「同一労働同一賃金」「非正規雇用の正規雇用化」へと政策の方向性が進んでいるのではないかと考えられます。現時点ではいずれも完全に義務づけられているものではありませんが、義務づけられる範囲は今後徐々に拡大していくものと考えて備えておくことが重要と考えられます。

そこで今回は、その備えとしての人事管理区分の多様化について考えてみます。なお、

人事管理区分の多様化とは、正社員のほかにも契約社員や嘱託社員、パート・アルバイトというように雇用の形態を多様化することや、同じ正社員の中でも複数の処遇ルールを設定すること

を指します。

近時の立法動向概観

まず最初に近時の立法動向について概観してみます。

同一労働同一賃金に関するもの
1.
パートタイム労働法

正社員と同視すべきパート・アルバイトについて、パート・アルバイトであることを理由とした賃金差別を禁止しており、この範囲では同一労働同一賃金が義務づけられていると考えてよい。
ただし、「正社員と同視すべきパート・アルバイト」の範囲が極めて狭く、該当するケースは現実には稀であると考えてよい。
しかし、上記に該当しないケースについても「正社員の賃金とのバランス」や「仕事や能力」を考慮した賃金支給が努力義務ではあるものの求められており、パート・アルバイトの賃金についても “その決定根拠をきちんと説明できる” ように備えておくことが必要である。

2.
労働者派遣法

平成24年4月6日公布の改正法で、派遣元が派遣労働者に支払う賃金について、派遣先で同じ仕事をしている従業員の賃金とのバランスを考慮することが配慮義務ではあるものの求められることとなった。
これなども「非正規雇用の拡大は止むを得ないが、反面同一労働同一賃金の考え方は今後幅広く求めていく」という政策の方向性ではないかと考えられる。

非正規雇用の正規雇用化に関するもの
1.
労働契約法

現時点では未だ法案段階であり、成立してはいないが、有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合に(労働者の希望を前提として)期間の定めのない労働契約への転換を求めている。「長期間に渡って基幹労働力として使用する場合には正規雇用に切り替えるべし」という政策の方向性ではないかと考えられる。

2.
労働者派遣法

平成24年4月6日公布の改正法で、派遣可能期間を超えて労働者派遣を受けた派遣先に対して、(派遣労働者の希望を前提として)直接雇用に切り替えることが法律上の義務として定められることとなった。

上記のほかにも同様の例は数多く存在し、「同一労働同一賃金」「非正規雇用の正規雇用化」が義務づけられる範囲は今後徐々に拡大していくものと考えて備えておくことが重要と考えられます。

どのように備えるべきか?

経営者としては「賃金コストが上がる」「雇用調整が難しくなる」といった心配が本音でしょう。しかし、前者については「仕事の価値に見合った賃金」であれば問題ありませんし、後者については「基幹人材と流動人材に区分した人事管理」を行えば解決することではないでしょうか?  ただし、この場合重要なのは「先手先手を打って準備し、備える」ということです。人の処遇というものは都合が悪くなってから慌てて対応したのでは必ずマイナスの効果の方が大きくなります。先を見越して用意周到に準備した者が勝つのです。

具体的には、次のように人事管理区分を多様化してより最適な業務運営体制を構築していくことが必要です。

ポイント1:最低4つ人事管理区分を設けることを基本とする
ポイント1 図

ポイント2:それぞれの人事管理区分に求める仕事の違いを明確化する

・仕事の違いを決してあいまいにしない。
→トラブル、法的リスクの回避。
・人事考課(評価)基準を通じて明確化する。
→流動人材以外は中長期の雇用を前提とするため人事考課(評価)の制度化は必須。

ポイント3:仕事の価値に見合った賃金水準を徹底する

・仕事の価値の上昇カーブと賃金カーブを一致させる。
→詳細は前月号を参照してください。
・上位区分への転換・昇格ルールを厳格化する。
→例)半年間上位区分の人事考課(評価)基準での仕事にチャレンジしてもらい、合格した場合に正式に転換・昇格とするルールの導入など。

現在は働く側にも自分自身の価値を高めることが求められて当然です。ただし、その主張が正当となるのは「基準が明確かつ合理的な場合」です。

まとめ

近時の立法動向を見てみますと、

「一定範囲では非正規雇用を今後も認めるものの、同一労働同一賃金の考え方は拡大していく」
「非正規雇用が常態化した場合には正規雇用への転換を求めていく」

という方向性が見てとれます。このことを前提としつつ、今から最適な業務運営体制を構築していくことが重要です。人の処遇というものは都合が悪くなってから慌てて対応したのでは遅いからです。人事管理区分を多様化するとともに、それぞれの区分の処遇の違いを合理的に説明できる明確な基準が必要です。本稿をご参考にしていただき、みなさんの会社における最適な業務運営体制を一度是非考えてみてください。

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