
前月号では、新人事制度のあり方を構想する=基本設計を行うにあたってのポイントについて解説しました。人事制度構築のステップとしては次に「新人事制度の詳細設計を行う」ステップへと進みます。具体的な人事考課の基準や考課表の作成、賃金額や昇給ルールの設定などを行うステップです。
そこで今回は、この新人事制度の詳細設計を行うにあたってのポイントについて解説することとします。
新人事制度の要件定義と基本設計を正しく行い、基本的な考え方としては立派なものが出来上がったとしても、新人事制度を実行に移すことはできません。具体的な人事考課の基準や考課表、賃金額や昇給ルールなどが完成して初めて新人事制度は実行できるようになります。従って、これらの作成、設定を行う詳細設計のステップを急ぐことは絶対に避けなければなりません。「急ぐ」とは踏むべき工程を正しく踏まないことを指します。
ポイントは次の3つに集約できるものと考えます。
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「基本設計の段階から実行可能性を検証しておくこと」とは、主に賃金制度のあり方について当てはまります。いくら考え方としてはすばらしいと思う賃金制度であっても、移行時点で多額の持ち出し原資を必要としたり、大幅な賃金ダウンとなる社員が多数生じるようなものは例外的なケースを除けば実行可能性がない、と言えます。�,亘寨茲録型融�制度の基本設計の段階で検証を済ませておくべき事項ですが、詳細設計に入る前に「実行可能性がない」とわかった場合には基本設計に立ち戻ってやり直す必要があります。現実には実行可能性が全く検証できていない基本設計の案を目にすることもかなり多いというのが実感です。
「運用可能な水準に到達するまで粘ること」とは、主に人事考課の基準作成について当てはまります。いくら基本設計で自社の基本的価値を明確化したとしても、それをわかりやすく社員に示し、また考課の基準として運用できる成果物にまとめ上げることができなければ、新人事制度の運用は形骸化してしまいます。では「わかりやすい」「考課の基準として運用できる」ようにするためのポイントは何でしょうか?それは人事考課の基準を通じて伝えたいことが“外形的に表現されているかどうか”に尽きるといってもよいでしょう。「○○という思いをもって」とか「○○と考えて」と言われても、考課者としては部下がそのような思いや考えをもっているかどうかわかりません。このようなときは「○○という思いや考えをもっている人はこのように行動する」という水準に到達するまで粘れるかどうかが実は大きな違いを生むことになるのです。新人事制度の構築を行う担当者も、詳細設計のステップに至るころにはかなり疲れてきますし、残された作業量も決して少なくないとなるとついつい妥協したくなるのです。しかし、ここで妥協する=急ぐ=踏むべき工程を踏まないと、基本設計までの努力もすべて水泡に帰してしまうのです。
「本質を失わないことを前提に極限まで単純化すること」とは、人事考課の基準、考課表、賃金など、新人事制度の詳細設計で取り扱う事項全般について当てはまります。人事部員でない、一般の社員が「新人事制度は何を目的にし、何を大切に考えているのか?」がよくわからなければ、何の効果も得ることはできません。単純かつ直截であればあるほどこれら“普通の人”の理解は深まります。そうするためには、新人事制度の詳細設計のすべての局面(さらには基本設計まで含めて)で、“目的や趣旨(本質)をもっと簡潔に実現できるしくみや表現方法はないか?”を常に考える以外にありません。既製のモデルを使用するということは最初から選択肢を1つに絞るということですから、最初からこの工程を踏むことを放棄するということです。
人事考課の基準、考課表の作成、賃金額や昇給ルールの設定など新人事制度の詳細設計を行うにあたっては、次の踏むべき工程を正しく踏むことが欠かせません。

基本的な考え方がいくら立派でも、この踏むべき工程を正しく踏まずに詳細設計のステップを急げばすべてが水泡に帰してしまうのです。