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第101回  2018年10月号

〜手当の3要件〜

はじめに

多くの会社が基本給のほかに様々な手当を支給しています。手当は基本給だけでは受け止められない特別な目的がある場合に限って支給する、というのが本来の姿です(※詳しくは2011年2月号で解説していますので是非ご覧ください)。従って、本来であれば「この手当にはこのような特別な目的があり」「このような条件に該当する場合に」「いくら支給する」というルールを従業員が納得するように説明できなければなりません。

しかし、実際には次のような問題が生じている会社も多く目にします。

・何の目的で支給している手当なのか、よくわからない。 ・古くなった給与体系を補正するために手当を通じた水準調整を行っているが、その手当の支給ルールは経営幹部の頭の中にだけあるため、論理的に説明できるものではない。

後者は「総合決定給」と呼ばれる手法で、中小企業においては従来は決して珍しいものではありませんでした。しかし、今夏成立した働き方改革関連法の内容などを考えた場合、給与決定の考え方を従業員が納得できるように説明できるしくみの構築は不可欠のものとなります(※詳しくは2017年2月号で解説していますので是非ご覧ください)。

そこで今回は給与のうち支給目的やルールが不明確となりやすい手当について、その防止策を考えてみたいと思います。

手当の3要件

手当の支給目的やルールについて不明確な部分を残さないためには次の3つの要件を給与規程に明記することが必要です。

〜 手当の3要件 〜 �〇抖覦婬� ��対象者 ��支給額

以下それぞれについて説明します。

�〇抖覦婬�

その手当を支給する目的のことです。「役職手当」を例に説明します。基本給の中に役職の違いによる責任の重さが含まれていない、あるいは一部しか含まれていない会社において「役職手当」を支給しているとします。この場合の役職手当の支給意義は「役職に伴う責任の重さに報いるため」となります。

��対象者

その手当の支給対象となる範囲のことです。「資格手当」を例に説明します。業務上有益な資格を保有し、業務に活用している従業員に対して「資格手当」を支給している会社があるとします。この場合の資格手当の対象者を明記するとは「どの資格に対して」「どれだけの期間」資格手当を支給するのかをはっきりさせるということです。例えば次のとおりとなります。

〜 例 〜

��支給額

その手当の支給金額のことです。従来は手当といえば月額いくらとするかを考えればほぼ十分といえましたが、同一労働同一賃金の法制化によって、今後は時給いくらとするかについても考えることが必要となる場合も出てきます。注意が必要です。

支給意義と対象者が不明確となりやすいケース

次に手当の3要件のうち、支給意義と対象者が不明確となりやすいケースについて取り上げてみたいと思います。

営業手当

「営業担当者に対しては月額○○○円の営業手当を支給する」。今でもよく目にする事例です。この規定文の最大の問題点は営業手当の支給意義がない、ということです。

このような規定文の会社で多くみられる実態は、時間外勤務手当の定額払いとして営業手当を支給している、というものです。もしそうであればそのように明記することが必要です。時間外勤務手当の定額払いが問題とならないためには次の2つの要件を満たす必要がある、というのが行政実務および裁判所の判例の立場だからです。

�〇�間外勤務手当の定額払いに相当する部分がいくらなのか、規定などから具体的に特定できること。
�∀�働基準法によって定められた方法で算定した時間外勤務手当の金額を下回らないこと。もし下回る場合にはその差額を追加支給すること。

営業手当については今でも一体何を目的としたものなのか?判然としない例を非常に多く目にします。あなたの会社の営業手当はどうですか?一度是非規定文をチェックしてみてください。

住宅手当

支給意義とそれに密接に関係する対象者が不明確となりやすいのがこの住宅手当です。借家の家賃補助なのか、住宅ローンの補助なのか、家屋の維持・修繕に要する費用の補助なのか、判然としないケースが多くみられます。「世帯主である従業員に対しては月額○○○円の住宅手当を支給する」。このような規定文がその典型です。

このような場合の問題点は、

住宅のどのような費用に対する補助なのかが明確でない ・手当として今後も支給を継続する必要があるのかどうかについて判断できない ・手当として今後も支給を継続するとしても対象者を合理的に説明することができない ・支給額の妥当性についても検証することができない

ということになります。

つまり、支給意義が明確でない手当はその対象者も、支給額も根拠となる判断基準を欠き、合理的に説明することができなくなる、ということです。

まとめ

手当は基本給だけでは受け止められない特別な目的がある場合に限って支給する、というのが本来の姿です。手当の支給目的やルールについて不明確な部分を残さないためには手当の3要件 �〇抖覦婬繊´�対象者 ��支給額 を給与規程に明記することが必要です。特に�,了抖覦婬舛�明確でない手当はその対象者も、支給額も根拠となる判断基準を欠くこととなるため、合理的に説明することができなくなります。

今夏成立した働き方改革関連法の内容などを考えた場合、給与決定の考え方を従業員が納得できるように説明できるしくみの構築は不可欠のものとなります。本稿がみなさんの会社における給与体系、とりわけ手当制度の検討の一助となれば幸いです。

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