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第161回 2023年10月号

〜人事制度の3つの柱について〜

はじめに

人事制度とは社員の待遇を決めるしくみのことです。

待遇の中で社員が最も関心を持つのは給与でしょう。給与の中で大きな比重を占めるのは基本給です。従って、会社としては「当社では何に基づいて基本給を決めるのか」をまず決める必要があります。この基本給の高さ、水準を決める基準のことを 「人事処遇の基準」 と呼びます。世間一般では資格制度、等級制度と呼ばれることが多いものです。

1.人事制度の1つめの柱 … 人事処遇の基準

次に会社としては一人ひとりの社員について、「基本給に見合った仕事をどれだけしてくれているのか」に関心を持つようになります。社員一人ひとりの貢献度を測るしくみが必要となります。このしくみのことを 「人事考課制度」 と呼びます。会社によって違う呼び名を用いることもありますが、意図するところ、目的は同じです。

2.人事制度の2つめの柱 … 人事考課制度

この人事考課制度を通じて社員一人ひとりの貢献度が把握されると、貢献度に応じて基本給を補正したり(昇給あるいは降給)、賞与の配分額を決定する必要が出てきます。これらを決定するしくみのことを 「給与制度」 と呼びます。

3.人事制度の3つめの柱 … 給与制度

以上が人事制度の3つの柱です。

それぞれ自分の会社に合うように決めていく必要がありますが、その際の留意点について以下では取り上げてみたいと思います。

1.人事処遇の基準について

「果たして自社で運用できるかどうか」。 この点に尽きるといってもよいでしょう。

例えば最近取り上げられることが多い「ジョブ型」について考えてみます。

ジョブ型とは職務、すなわち与えた仕事に基づいて基本給を決定するしくみのことです。これは特段新しいものではなく、パートやアルバイトの基本給決定のしくみはほとんどがこのジョブ型です。パートやアルバイトの募集にあたっては「経理事務、時給○○円」「販売職、時給○○円」としていることが多いでしょう、これは典型的なジョブ型です。そもそも経理事務⇔販売職間の職種変更はほとんど予定されていませんし、もし職種変更を行う場合には時給も変更しなければなりません。また、ある程度の昇給は予定されていても例えば正社員に登用されるなどしない限り、時給(基本給)が大きく昇給することはありません。

これと同じことを正社員についても行えるかどうかということです。

例えば新卒新入社員をはじめとする若年層はその多くが会社に入ってから職業人としての能力を身に付けていきます。また、どのような適性があるのかについても実績に基づいて判断しなければなりませんので職種の変更も予定しておく必要があります。このとき、昇格・昇進するなどして職務の難易度が大きく上昇するまで基本給の昇給を抑えておくことができるのか、また、職種を変更する都度基本給を変更することが自分の会社でできるのか、ということです。

「できる」場合には躊躇する必要はありません。また、入社後一定年数を経過し、各自の専門分野が固まってきたらジョブ型とする、といったこともあると思います。

しかし、 「できない」場合にはそのできないと考える理由の中に自社における基本給決定の要素が含まれている と思います。生活に要する費用の上昇、仕事を覚えてもらう動機づけなどです。このような場合には基本給決定の基準の中にこれらの要素も取り込むことが必要です。

2.人事考課制度について

「自分の会社ではこのような社員を貢献度が高いと考える」。 この点が社員にはっきりと伝わるものである必要があります。

ではどのようにすればそれが可能となるのでしょうか?

次の2つの要素が人事考課の基準の中に明記されていることが必要であると考えます。

�� 自社の強みとすること

�� 今後重点的に取り組んでいくことがら

自分の会社における経営方針、基本戦略ということができます。

人事考課制度が経営者から見てもの足りなく見える最大の原因は「経営方針、基本戦略と人事考課制度のつながりがないこと」 であると考えます。経営方針、基本戦略とつながりのない人事考課制度は給与や賞与をとりあえず決めるだけの事務作業となってしまうからです。

売上や利益といった業績、数字ももちろん人事考課の要素とする必要がある場合が多いでしょう。しかし、 今後も再現性を持って売上、利益を伸ばしていくためには経営方針、基本戦略の現場における実行が必要 です。そのためには人事考課制度を通じてそれを促していかなければなりません。

3.給与制度について

基本給については<1.人事処遇の基準について>で述べたとおり、「果たして自社で運用できるかどうか」ということになります。自社における基本給決定の考え方を正しく見極めたうえでルール化する必要があります。

そしてこのことは基本給の高さ、水準を決める場合だけでなく、基本給の昇給や降給、賞与の配分額の決定についても当てはまります。

特に基本給を引き下げる降給については自社においてやり切れるのか、公平な運用ができるのかを事前によく考えることが大切です。「基本給が下がるので人事考課を下げられない」では人材の育成にはつながりません。そのような場合には一部の例外を除いて基本給の引き下げは行わないとしてしまったほうが正しい人事考課の実施→人材の育成につながることになります。ただし、このようにする場合でも基本給の昇給なし(据え置き)や賞与の減額といったことは行う必要があります。そうでなければ高い考課をとった社員に対して不公平となりますし、低い考課の社員に向上意欲を持たせることもできなくなってしまうからです。

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