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第88回  2017年9月号

〜有期雇用を続けることの意味を問い直す〜

なぜ有期雇用が広まったのか?

有期雇用とは、半年や1年というように期間を定めて雇用することをいいます。
90年代初頭までは主婦といわれる人たちのパートや学生アルバイトなどの雇用形態として用いられていました。これらパートや学生アルバイトは補助的労働力として正社員の仕事を手伝うことが主な役割でしたので、待遇は正社員に比べ低くて当たり前と考えられていました。
その後経済成長が低迷する中で人件費を節約できるという理由から、この有期雇用が正社員と同じフルタイム勤務や、従来は正社員が担当していた仕事にまで拡大されて行きました。そして正社員との大きな待遇差だけが残ったままという状況が現在まで続いています。

有期雇用を続けるうえでの法的留意点

有期雇用をめぐっては上記のとおり不合理と考えられる面があるものの、入社時(契約時)に本人が納得しているからという理由から法律をもって是正を図るという対応は遅れていたというのが事実です。しかし最近法律の改正やその具体的準備が行われ、今後有期雇用を続ける場合には次の2点に留意することが必要です。

�〔鬼�転換権の発生

2013年4月1日以降に開始する有期雇用の契約を1回以上更新し、それら有期雇用の通算契約期間が5年を超える場合、労働者本人が期間の定めのない雇用契約への転換を希望した場合には、会社はそれに応じなければなりません。

〜例〜

これは労働契約法第18条によってすでに定められているものです。

��同一労働同一賃金

正社員と有期雇用者(パートを含む)との間で、基本給、手当、賞与などの待遇について、仕事内容や責任などが同じであれば同じ待遇を、違いがあればその違いに応じた待遇を行うことが求められます。
昨年末に「同一労働同一賃金ガイドライン案」が国から発表され、関連法律の改正を経て2019年以降の本格実施が現時点では予想されています。

有期雇用は得か損か?

前述した90年代初頭までのような主婦といわれる人たちのパートや学生アルバイトなどについては有期雇用は今後も得である場合が多いことと考えられます。これらは補助的労働力であり、短期間で人を入れ替えてもOJT(日常業務を通じたトレーニング)を含む教育投資の喪失はそれほど多くありません。また同一労働同一賃金の面から問題が生じる可能性も小さいと考えられます。

しかし、これら補助的労働力とはいえない、基幹労働力として事業の中に組み込まれている人たちについては今後も有期雇用を続けることの意味を改めて問い直してみる必要があると考えます。

※基幹労働力… その存在なしでは現在の事業の運営形態を維持できなくなるような人たち。例えば小売業において店長のみ正社員、一般の販売員はすべて有期雇用者という場合の有期雇用者などを指す。

具体的には次の3つの点からの問い直しが必要であると考えます。

�〆里蠅燭た佑�今後も必要な分だけ確保できるか?

「20代の経験者を短期間のOJT(日常業務を通じたトレーニング)を通じて戦力化し、現場を運営していく」「応募者集めに困ることはない」「一定期間で人が入れ替わった方がむしろ好都合」といった考え方で運営されている会社も10年位前まではむしろ普通でした。
しかし、深刻な少子化に直面している現在、今後もこのような考え方で運営できる会社はほとんどないものと考えられます。もしピンとこない方がいらっしゃれば「人口ピラミッド 厚生労働省」でインターネット検索してみてください。5年後には今よりもさらに深刻な若年労働者不足が最低数十年にわたって続くことがおわかりいただけると思います。

�⊃遊鑒颪寮疚鵑�目的となっていないか?

人件費の節約を目的とした有期雇用は後日差額を請求されるなど今後は会社にとっての大きなリスクとなります。もし「人件費が節約できるから」という理由だけでこれまで有期雇用としてきたのであれば今後は考え方を転換する必要があります。

�M�期雇用者の雇用調整を過去現実に行ったことがあるか?

有期雇用とする理由の一つに「雇用調整の行いやすさ」があります。「一度正社員としてしまうとなかなか解雇することができないから、万一の場合に備えて有期雇用にしておく」ということです。しかし過去を振り返ってみて、一体何回有期雇用者の雇用調整(雇い止め)を行ったことがありますか?
中堅・中小企業の場合、有期雇用者を含めて家族主義的な考え方で運営されている会社もまだまだ多いのが現実です。属する業界の特性などにもよりますが、基幹労働力として事業の中に組み込まれている有期雇用者については過去雇用調整の対象としたことがない、という会社も多いことと考えます。

以上3つの点から問い直してみた場合、基幹労働力として事業の中に組み込まれている有期雇用者については、今後は正社員に切り換えていった方が得であるケースも多いことと考えられます。職務や勤務地、労働時間などを限定した正社員のコースを新たに設定することなども選択肢の一つとなりうるでしょう。

多様な人材が活躍できる人事制度への転換を

新卒者をはじめとする20代の人材を採用し、将来会社の中核を担うべき人材として育成していくということは今後も継続すべきです。 新卒一括採用方式という社会構造自体が変わらない限り、それが自社にとって最も優秀な人材を採用できるチャンスであるためです。
しかし、それだけにこだわりすぎると事業を運営していくために必要な人材を確保することができなくなる会社が今後は非常に多くなるものと考えられます。
これまでのように有期雇用として「一定期間で新陳代謝させ」「人件費を節約し」「万一の場合の雇用調整の保険」とすることが本当に自社にとって得なことなのかどうか、問い直してみることが必要です。「多様な人材を取り込み」「仕事内容や責任に応じて適正な処遇を行い」「一度育てた人材は逃さない」人事制度の構築が今こそ求められていると考えます。

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