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第22回  2012年3月号

制度の高度化の具体例(その2)

はじめに

今回は前月号の中で触れたポイント1について解説します。みなさんの会社の人事考課(評価)制度がもし

S:極めて優れている、A:優れている、B:標準、C:やや劣っている、D:大変劣っている

とだけ定めていて、後は考課(評価)者の裁量に委ねている、という場合にはぜひご覧になってみてください。

考課(評価)ランクごとの具体的な判断基準が示されていないことによる弊害

例えば「報告・連絡・相談は的確に行えていたか」という考課(評価)項目があったとします。この考課(評価)を

S:極めて優れている、A:優れている、B:標準、C:やや劣っている、D:大変劣っている

とだけ定めて、後は考課(評価)者の裁量に委ねた場合、評価尺度を統一するためには多大な労力を要することとなります。どのような報告・連絡・相談のあり方が「的確」なのか、個々人で考え方が違うためです。報告・連絡・相談の内容が“正確”なものであれば「的確」と判断する人もいるでしょうし、その“早さ”を重視する人もいるでしょう。この場合、評価尺度を統一するためには考課(評価)者研修を通じて会社としてどのような報告・連絡・相談のあり方が「的確」なのか、具体例をもって教育することが必要となります。これをほかの考課(評価)項目についても行い、継続していくためには多大な労力を要します。

「一つひとつの考課(評価)項目をそんなに厳密に考えなくても最終的な考課(評価)さえ合っていればよいではないか」という考え方は適切ではありません。会社の理念・方針や計画を日々の仕事を通じて実現していくのは社員です。従って、これらを実現するために“どのような考え方や行動をとることが推奨されるのか”を社員にはっきりと示すことは経営者として必須の事項です。この地道な作業なくして理念・方針、計画が実現することはありえませんし、そもそも

Plan(計画)→Do(実行)→Check(評価)→Action(再挑戦)

のサイクルのD以降が機能しません。考課(評価)という社員が最も関心を持つ場を通じて

“当社では何が正しく、何が正しくないのか”

を具体的に示すことは考課(評価)尺度の統一だけにとどまらない、経営の根幹にかかわる事項ということができます。

考課(評価)ランクごとの具体的な判断基準を作成する際のポイント

「考課(評価)ランクごとの具体的な判断基準を全ての考課(評価)項目について作成するのは大変だ」と思われるかもしれませんが、ポイントを押さえてしまえば後は慣れです。「人事制度の運用がうまくいかない」原因の多くは実はこの「大変だ」という気持ちに負けて、この作成作業を省略してしまっていることにあります。一番肝心の部分が抜け落ちてしまっているのですからそもそも当初のねらいどおりの運用ができるはずがないのです。

ポイントは次の3つに絞られます。

� 判帖匹謀験�するか、“横”に展開するかを決める。
��展開する“段階数”を決める。
��“標準”のレベルを上げすぎない。

以下順を追って解説します。

� 判帖匹謀験�するか、“横”に展開するかを決める

“縦”に展開するとは、初歩的なレベルから高度なレベルへと加点主義的に判断基準を“積み上げていく”方式です。例えば次のような場合が該当します。

文章力

一方、“横”に展開するとは、“標準”(=合格)レベルを基準として高いレベルと低いレベルを“左右に展開する”方式です。例えば次のような場合が該当します。

報告・連絡・相談

“縦”に展開する方式は資格や等級の上下にかかわりなく共通の考課(評価)基準を適用すべき場合に適します。より具体的には2010年7月号と8月号に詳しく解説していますので、是非一度ご覧になってみてください。

一方、“横”に展開する方式は資格や等級ごとにそれぞれ別の考課(評価)基準を適用すべき場合に適します。

なお、上記で取り上げた「文章力」や「報告・連絡・相談」はどこの会社でも当てはまるような項目であり、会社ごとの理念や方針が色濃く反映されるものではありません。実際の考課(評価)項目の設定にあたっては自社の理念や方針を前面に打ち出すことが必須です。こちらについても具体例としては上記2010年7月号・8月号がご参考になると思います。

��展開する“段階数”を決める

上記「文章力」の例では縦に“4段階”、「報告・連絡・相談」の」例では横に“5段階”展開しています。“何段階に展開しなければならない”という公式があるわけではありませんが、縦・横ともに“4段階”程度とすることが適切と考えられます。多くの場合実際の仕事の遂行レベルの差はその程度ですので、それ以上段階数を増やしても実態とは合わなくなります。

��“標準”のレベルを上げすぎない

“標準”のレベルを上げすぎるとは、例えば上記「文章力」の例では「3」のレベルを「1」として設定したり、「報告・連絡・相談」の例では「A」のレベルを「B」として設定してしまうことです。これによる弊害は、適正な運用を行えば行うほど“ほとんどの人が標準の評価とはならなくなる”ということです。特に

コンピテンシーと言われる、高業績者の思考や行動の特性を考課(評価)基準として採用する

場合には注意が必要です。自社の社員の現状の水準から“少し上のレベル”を“標準”として設定するようにしてください。

まとめ

今回は制度の高度化の具体例として、考課(評価)ランクごとの具体的な判断基準の設定を取り上げました。一つひとつの考課(評価)項目について考課(評価)ランクの判断基準を示すことは、

“会社の理念・方針や計画を実現するために「何が正しく、何が正しくないのか」を社員に具体的に示す”

ということです。このことなくして会社の理念・方針や計画が実現することはありえません。また、人事制度の運用という面からみてもこの部分の高度化が一番肝心です。本稿がみなさんの会社における高度化作業のご参考になれば幸いです。

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