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第102回  2018年11月号

〜36協定は分権管理へ〜

36協定とは

「1日8時間、1週40時間まで」。これが労働基準法の定める従業員を働かせることのできる労働時間の上限です。しかし、繁忙期や突発的なトラブルに対応するためにはこの上限を超えて従業員に働いてもらう必要が生じる場合があります。「36協定」とは労働基準法が定める労働時間(法定労働時間)の上限を超えて従業員に働いてもらう場合に、使用者側と従業員(労働者)側とで協議のうえ定めなければならない協定書のことです。労働基準法36条に根拠規定があるため、「36協定」と呼ばれています。1週1日または4週4日の労働基準法の定める休日(法定休日)に従業員に働いてもらう場合にもこの36協定は必要となります。

事業場とは

36協定は「事業場」ごとに労使で話し合って決める、ということが労働基準法36条に定められています。この事業場とは会社全体のことではなく、工場や店舗、営業所など、それぞれの事業を行っている場所のことを指します。工場や店舗、営業所などが複数あって、それぞれが別の場所にあれば、36協定は工場や店舗、営業所の数だけ必要、ということです。

中堅・中小企業における現実

従って、法律上は36協定は本社で中央集権的に決めるものではなく、事業場ごとに分権的に決定されるべきもの、ということができます。

ところが、中堅・中小企業の場合、次のような流れで36協定が締結されている、というのが現実ではないでしょうか?

本社で法定労働時間を超えて働かせることができる「事由」や「時間数」などについて全社統一的な素案を作って各事業場の長あてに送付する。

各事業場の長は部下(労働者側)にその内容を説明し、労働者側の代表者を挙手などで選出してもらったうえで、協定書に労働者側代表者の署名、捺印をもらって、本社へ返送する。

本社でそれぞれの事業場を所轄する労働基準監督署に届け出る。

この場合、次の問題が生じる可能性が高まることは避けられないでしょう。

�� 労使の協議が形式的になる。

本社から指示された提出文書を提出する、という意識のほうが強く、36協定の中身については労使ともに十分に吟味しなくなるおそれがある。

法定労働時間を超えて働かせることができる「事由」や「時間数」などの中身について、“それで十分か?”“約束した「事由」や「時間数」などの制限を守ることができるか?”といった吟味が行われない。

�� 各事業場の長の当事者意識が育たない。

事業場の長として労働時間の管理、36協定の遵守を適正に行いつつ、業務の効率化、ムダの排除を推進することへの責任者意識、当事者意識が希薄になる。

�� 36協定の制限、遵守を意識しなくなる。

� ↓△�長年繰り返されることで、36協定の形式化、事業場の長の当事者意識の希薄化が進み、やがて36協定の制限や遵守を誰も意識しなくなってしまう。

36協定は分権管理へ

働き方改革関連法の施行により、大企業は来年4月1日から、中小企業は再来年4月1日から、36協定を締結しても「この時間数までしか法定労働時間を超えて従業員を働かせることはできない」という制限が罰則付きで課せられることになりました。また、従業員の労働時間の把握についても、タイムカードやパソコンのログイン・ログアウト時間などの客観的な方法によることが求められることになります(大企業、中小企業共通で来年4月1日から)。

それぞれの事業場の長は従来以上に労働時間の管理、36協定の遵守を適正に行いつつ、業務の効率化、ムダの排除を推進していかなければなりません。そのためには事業場の長としてのこの「課題」に対する責任者意識、当事者意識が不可欠です。「売上さえ上げていればいい」「利益さえ出していればいい」という考えでは会社を窮地に追い込むこととなります。また、この「課題」を解決するための方策はそれぞれの事業場によって異なる部分も多くあります。36協定の本来の姿である「それぞれの事業場ごとに労使で話し合ってその内容を決めていく」ことがこの「課題」の解決にとって有益であることは間違いありません。36協定の協議、締結はそれぞれの事業場が主体となって行う分権管理であるべきです。本社はそれを可能とするための情報提供や従業員教育などの役割を中心とするべきでしょう。

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