事例解説

ホーム > 事例解説 > 第17回 2011年10月号

第17回 2011年10月号

〜就業規則の位置づけについて考える〜

はじめに

人事・労務に関する社内制度やルールを定めるものとして誰もが頭に浮かぶのが就業規則です。従って、人事・労務に関する課題解決にこれから取り組もうとする場合、就業規則の点検や見直しから始めようと考える経営者の方も少なくありません。しかし、“会社経営における”就業規則の位置づけを冷静に考えた場合、この取り組み方が適切でないケースも数多く存在します。

そこで今回は「就業規則の位置づけについて考える」と題しまして、就業規則の正しい点検や見直しの仕方について解説したいと思います。
よろしくお願いします。

会社経営における就業規則の位置づけ

まず前述した“会社経営における”就業規則の位置づけから考えます。
就業規則は法的には会社と社員の間の権利や義務を定めるものです。従って、会社も社員も就業規則に違反すれば何らかのペナルティーが科せられます。このように就業規則とは会社・社員の双方が「守って当たり前の基準」を定めたものです。従って、社員が毎日仕事をしていく中でいちいち「自分の行動が就業規則に抵触しないかどうか」を考えなければならないということは不自然なことですし、現実に一部の限られた事項を除けばそのようなことをしている社員など存在しません。
このように“会社経営における”就業規則の位置づけは、

守って当たり前の基準=最低限度の基準

ということができます。

就業規則の正しい点検や見直しの仕方

このように会社経営における就業規則の位置づけを考えますと、人事・労務に関する課題解決に取り組むうえで「まず就業規則の点検や見直しから始めるべき」というケースはごく一部の場合に限られる、といえます。代表例としては適法性の診断、すなわち労働基準法をはじめとする諸法令に今の就業規則が適合しているかどうかをチェックする、といった場合を上げることができます。しかし、「会社の理念や方針を社員に浸透させたい」といった場合には、就業規則の点検や見直しからまず始めるというのは適切ではないケースがほとんどでしょう。それは就業規則という「守って当たり前の基準」「社員が日常的には意識しないことがむしろ自然な基準」の改定ではその効果が期待できないためです。会社の理念や方針という“高い志”を社員に浸透させ、その実現を図っていくためには、もっと強い動機づけが必要です。人事考課(評価)基準の改定や給与(報酬、賃金)制度のしくみの整備をまず先行させることが適切です。2011年1月号を是非ご覧になってください。

では適法性の診断以外の多くの場合に採るべき就業規則の正しい点検や見直しの仕方とはどのようなものなのか、以下に解説します。

ステップ1:自社における人事・労務に関する課題の列挙

ランダムでかまわないので、自社における人事・労務に関する課題をどんどん上げていきます。
−「転勤を嫌がる社員が多い」「社員教育が十分行われていない」「給与が完全な年功序列で不合理」「残業、休日出勤が多い」「経営計画達成に向けての執着心が足りない」など。
なお、自社における人事・労務に関する課題を考える際の判断基準の一つとして就業規則の記載事項を活用することは考えられます。ただし、結果として課題の範囲が狭くなりすぎたり、細かい事項にばかりなっていないかどうかはよく注意しながら行う必要があります。
また、育児・介護休業など法律上義務づけられている制度でもし未設定のものがあれば当然課題の中に含める必要があります。

ステップ2:課題解決のための諸制度の企画・立案

いきなり「就業規則を改定して…」と考えるのではなく、まずはじっくりと制度の中身を詰めることが大切です。就業規則というものは“労働基準法で記載が義務づけられている事項についてのみ”“条文化”すればよいのです。記載が義務づけられていない事項については就業規則とは別の「マニュアル」等にまとめた方が賢明です。その方が条文の体裁にとらわれることなく図表等を自由に使用して表現できますし、社員にとってもわかりやすくなります。また、変更や改定の必要が生じた場合でも就業規則の場合には労働基準法所定の手続きが必要となりますが、「マニュアル」等であればその必要がありません。
なお、この制度企画の段階では「法的な要件をクリアーしているかどうか」のチェックも十分に行っておくことが必要です。

ステップ3:就業規則の点検、見直し

最後に、企画・立案した諸制度を就業規則の中へ反映させます。前述したとおり、就業規則というものは“労働基準法で記載が義務づけられている事項についてのみ”“条文化”すればよいのです。「マニュアル」等とのすみ分けを上手に考えながら条文化していきます。なお、対象となる就業規則の範囲は就業規則本則だけではありません。給与(賃金)規程、旅費規程、育児・介護休業規程などの付属規程を含みます。また、必要な場合には新しい規程を作成します。このうち条文化するのが難しいのは給与(賃金)規程と旅費規程です。この2つの規程は各会社ごとの制度の独自性が最も強く反映されるためです。それぞれについて作成上のポイントを以下に示します。

〜給与(賃金)規程作成上のポイント〜
�ゝ�定したことは社員との間の契約事項となるため、“約束できることかどうか”をよく考えながら条文化する。“約束できないかもしれないこと”は条文化しないで内規として定めるにとどめたり、約束できる範囲内でのみ条文化するといった工夫が必要。
��給与(賃金)項目のうちの「手当」についてどのような場合に支給対象となるのか、“その範囲がはっきりと判断できる条文か”を特に注意する。
〜旅費規程作成上のポイント〜
�‐鯤犬世韻派集修靴茲Δ箸垢襪畔�雑になりやすい。
�◆嵎棉宗廚鮠綣蠅乏萢僂靴篤�帰り出張旅費、宿泊出張旅費などの旅費の支給区分ごとに“一覧表にしてまとめること”を心がけるとわかりやすくなる。

まとめ

“会社経営における”就業規則の位置づけは「守って当たり前の基準」「社員が日常的には意識しないことがむしろ自然な基準」です。従って、単に就業規則の条文を改定したり整備するだけで何か経営上の効果が得られるというのは少ないというのが現実です。解決すべき課題は何で、そのためにはどのような対策が必要なのかをまず考え、“その結果を就業規則に反映させる”というのが正しい対応の仕方です。

次回からはランダムにピンポイントのテーマを取り上げて解説していきます。引き続きご愛読ください。よろしくお願いいたします。

テーマ別索引
ページの先頭に戻る

企業文化研究所 〒162-0822 東京都新宿区下宮比町2-28 飯田橋ハイタウン206号室 TEL.03-6265-0805